千野栄一 『外国語上達法』

 

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)

 

 【要約】

外国語習得のために必要なものはお金と時間である。覚えるべきものは語彙と文法であり、そのためには良い教科書、良い教師、良い辞書を確保すること。
単語は1000語を目標にひたすら覚えるべし。文法は、覚えなければならないのは文法のテキストに載っている変化表であり、それは煎じ詰めるとだいたいどの言語も10ページほどである。
 
【感想】
私は最近、瞬間英作文をやっているのだけれど、その効果が非常に高いと実感している。その実感から、外国語習得のためには、母語から外国語への翻訳をすることが、それも腕を組んで考えこんでするのではなく、パッと口から出てくるようになるまで鍛えあげるのがカギだと考えていたが、本書でそれを裏付けるような記述が出てきて自信を持った。
 
先生は各人に小さなノートを用意させ、それを単語帳にする。
授業の最初に、その時間で扱う文法事項の手短な説明があり、極少数の語彙が与えられてから授業が始まる。授業の圧倒的大部分の時間は、母語から外国語の翻訳に当てられる。まず語彙を覚えるための優しい短文が繰り返し当てられ、新出の語彙が覚えられたのが確認されると、その日の文法事項がその作文の中に組み込まれてくる。学生がたんごでつっかえると、すぐ小さなノートにその単語を書き加えることを要求し、更に、その語が入ったいくつかの文を訳させる。そのノートの単語は学期が深まるにつれて一人ひとりで違ってくるので、やがて生徒をあてるとき一人一人からノートを提出させ、それを見ながら作文が要求される。
授業は毎回、このプロセスの繰り返しである。極小数の単語(約20語平均)と少数の文法事項を学ぶだけで決して先へは急がないが、それまでに習ったことは確実に身につけさせるシステムといえよう。
 

日本人は英語が話せないとよく言われるが、その理由は簡単だ。英語を話す訓練を全くしていないからだ。私が通っていた中学高校では、英語の授業の7割以上の時間を英文和訳に割いていて、英作文はお飾り程度のものだった。英会話に至っては全くのゼロだった。
そもそも高校生が英語を勉強する理由はだいたいが試験のためだが、受験英語では、英語のインプット(リーディングとリスニング)が求められるだけで、アウトプット(ライティングとスピーキング)に関してはほとんど求められないない。大学受験合格のために最適化されている学校の授業では、当然軽い扱いを受ける。
英語を話す訓練をしていないならば、英語が話せなくても当たり前だ。高校生は今からでも瞬間英作文をやるのをお勧めする。
 

 

どんどん話すための瞬間英作文トレーニング (CD BOOK)

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