『海辺のカフカ』以降の村上春樹はあんまり好きじゃない
初期の作品は一人称で、だんだんと三人称を使うようになるのだが、海辺のカフカが三人称を使うどうかのちょうど境目だ。
三人称になってから文章の切れ味がなくなったように思える。
文章の切れ味がなくなった最大の理由は文体の変化だ。
処女作の『風の歌を聴け』で魅せた、かなり癖があるものの独特の中毒性がある翻訳文体が年々薄くなった。
バタ臭かった翻訳文体が消臭され、中和化され、癖がなくなったのは良いことのように思うかもしれないけれど、
翻訳文体だからこそ許されてきたキザったらしいセリフが、文体の中和化によって、日本語として読むには耐えないものになってしまった。
ちょうど、洋画の吹替ならば自然と耳に入るキザなセリフも、日本人の俳優が真顔で吐いてるのをみると背筋がザワザワすのと同じだ。